脳神経外科てきとうjournal club

読み癖をつけるために

September 7, 2011 “Stenting versus Aggressive Medical Therapy for Intracranial Arterial Stenosis"

“Stenting versus Aggressive Medical Therapy for Intracranial Arterial Stenosis"

M. Chimowitz, et al.

N Engl J Med 2011; 365: 993-1003

 

【背景】

頭蓋内動脈のアテローム性狭窄は脳卒中の重大な原因のひとつであり、脳卒中再発の予防目的に経皮的血管拡張・ステント術(percutaneous transluminal angioplasty and stenting: PTAS)で治療されてきている。それにも関わらず内科治療とのランダム化試験で比較がなされていなかった。

【方法】

一過性脳虚血発作(TIA)/脳卒中を発症した頭蓋内主幹動脈が70-99%狭窄を来している症例を、積極的内科治療単独群とWingspan stent systemを用いてのPTAS併用群にランダムに割り付けた。Primary end pointは登録もしくは血管形成手技から30日以内の脳卒中/死亡、または30日以降の同一血管領域の脳卒中とした。

【結果】

30日後の脳卒中/死亡はPTAS群で14.7%(非致命的な脳梗塞: 12.5%、致命的な脳梗塞: 2.2%)であり、内科治療群で5.8%(非致命的な脳梗塞: 5.3%、致命的な脳梗塞: 0.4%)であり、451例が登録された時点で登録は終了した。30日以降の同領域脳卒中は両群で13例に認められた。フォローアップ期間は現時点で平均11.9ヶ月であった。脳卒中/死亡のイベントが起こる確率は両群で有意に差があり(P=0.009)、1年間での同イベントの確率はPTAS群で20.0%、内科治療群で12.2%であった。

【結論】

PTAS後の早期脳卒中のリスクが高いことや内科治療による脳卒中のリスクが想像以上に低かったことから、頭蓋内動脈狭窄に対して内科治療がWingspan stent systemを用いたPTASより優れていることが示された。

 

【ひとこと】

頭蓋内狭窄病変に対するステント留置を完全に否定したSAMMPRIS study。内科治療群はアスピリン375mg/d、クロピドグレル75mg/dの内服に加えて、血圧、LDLコレステロール、糖尿病、喫煙習慣、肥満、運動不足などのリスク因子に関しても管理を行った。ステント留置は周術期の合併症が多く、遠位塞栓をきたしてしまう場合も少なくはなかった。Wingspan stent systemは現在頭蓋内狭窄病変に対して用いることのできる唯一のステントだが、その後新規のデバイスは発表されていない。PTAを繰り返しても無効な場合や解離してしまった場合など、ステントがどうしても必要な場面が存在することもまた事実だ。