脳神経外科てきとうjournal club

読み癖をつけるために

February 11, 2015 "Randomized Assessment of Rapid Endovascular Treatment of Ischemic Stroke"

"Randomized Assessment of Rapid Endovascular Treatment of Ischemic Stroke"

Goyal, et al.

N Engl J Med 2015; 372:1019-1030

 

【背景】

 前方循環主幹動脈閉塞の患者はt-PAの使用にも関わらず60-80%が90日後の死亡または機能的非自立の転機となる。梗塞コアが小さく、頭蓋内主幹動脈閉塞で、比較的側副血行路が発達している症例に通常治療に加えて急性期血管内治療を施行して評価した。

【方法】

 Control groupとintervention groupにランダムに割り付けた。発症12時間までの主幹動脈閉塞を対象とし、CT、CTAで広範囲梗塞や側副血行路が乏しいものは除外した。Primary outcomeは90日後のmRS。2群の比較のためには比例オッズモデルを用いた。

【結果】

 Intervention groupの優位でTrialは早期中止となった。世界22施設の316例、その内238例がt-PAを使用した(120例がintervention groupに、118例がcontrol groupに割り付けられた)。Intervention groupでCT撮影から再開通までの時間の中央値は84分だった。機能的自立(mRS 0-2)の割合は53.0%, vs. 29.3%とintervention groupが著明に高かった(p<0.001)。primary outcomeでもintervention groupに良好であり(共通オッズ比2.6、95%信頼区間1.7-3.8)、死亡率に関しても10.4%, vs. 19.0% (p=0.04)と有意にintervention groupで低かった。症候性頭蓋内出血に関して有意差はなかった(intervention 3.6%, control 2.7%, p=0.75)。

【結論】

 梗塞コアが小さく、側副血行路の発達が良い頭蓋内主幹動脈閉塞による急性期脳梗塞患者に対しては血管内治療による血栓回収術が機能予後、死亡率の改善に対して有効である。

 

【ひとこと】

 「ホノルル・ショック」で血管内治療の有効性が示されず暗雲が立ち込める時期に、血栓回収療法のエビデンスを示したRCTのひとつ、ESCAPEの論文。治療のほとんどが(130/151, 86.1%)がステントリトリーバー(SolitaireやTrevo)により行われており、従来のMerciやPenumbraを使用したstudyより再開通率や再開通時間が改善されたことも血管内治療の勝利に繋がったと思われる。発症12時間以内で側副血行の良い症例に対する血栓回収療法の有効性を証明した。

 2015年2月、アメリカのナッシュビルでの国際脳卒中学会にて同時に発表されたEXTEND-IA、SWIFT PRIMEと合わせてナッシュビルホープと言われている。現在の急性期血栓回収療法にエビデンスを与えた重要な論文でありガイドライン改訂に一役買った。脳血管内治療医は歓喜に沸いた(らしい)。