脳神経外科てきとうjournal club

読み癖をつけるために

September 14 2016 “血栓回収療法による血栓組織と有効再開通の関連”

“Histopathologic analysis of retrieved thrombi associated with successful reperfusion after acute stroke thrombectomy”

Hashimoto T, et al.

Stroke. 2016; 47: 3035-3037.

 

【はじめに】

 急性期脳梗塞に対する血栓回収療法は捕捉された血栓の組織病理学的検討を可能にした。Marderらの報告では血栓の構造的特徴は似通っていて、心原性なのか動脈原生なのかは判別困難であるし、単純に赤と白には分けられないとされた。

 近年の報告では、CTでのhyperdense vessel signが赤血球の豊富な血栓を示唆するなど、画像所見との関連も報告されている。本報告では、有効再開通と血栓の組織病理学的特徴の関連について調べた。

【方法】

 当施設(国立循環器病センター)で2010年から2015年に血栓回収療法を実施された142症例を後方視的に検討、有効再開通の定義はTICI 2b以上。

【結果】

 142例中83例が対象となり、58例(70%)で有効再開通が得られた。有効再開通群では女性が少なく(26%vs64%, P=0.001)、Merciを用いた症例が少なかった(17%vs52%, P=0.003)。

 有効再開通群では血栓中にatheromatous gruel(粥腫粥)が存在しない症例が多く(3%vs20%, P=0.024)、赤血球の割合が多かった(57±23%vs47±24%, P=0.042)。赤血球比率の有効再開通のカットオフ値は64%だった(P=0.014, 感度0.509, 特異度0.800)Atheromatous gruelを含む血栓はMerciで捕捉される割合が高かった。

 多系統ロジスティック回帰解析でも、atheromatous gruelの存在と赤血球比率は有効再開通に独立して関与する因子であった。赤血球比率が多い血栓は、心原性脳塞栓症の症例の中だけでも有効再開通率が高い結果であった。

【考察】

 Atheromatous gruelを含む血栓は有効再開通が得られにくい結果であった。Atheromatous gruelは動脈硬化性のプラークによるin situの血栓症で見られると思われ、さらにAtheromatous gruelを含む血栓は、容易に壊れて小さいかけらになってしまうとされており、これらが有効再開通率を下げる結果となった可能性がある。また、動脈硬化性狭窄のある患者への血栓回収療法は血管内皮へのダメージがあり、よくないとの報告もあり、これも結果に関与した可能性がある。

 赤血球比率の多い血栓は有効再開通が得られやすい結果であった。この結果は過去のCTでの血栓のhyperdense vessel signが有効再開通と関与する報告と一致するものである。赤血球比率の高い血栓は粘度や変形能が高いとされ、血栓が破砕されにくいことから、有効再開通が得られやすい可能性がある。

 Limitationは単施設の後方視的研究であること、説得力のあるデータとしては不十分であること、rt-PAの使用の有無が検体へ影響を与えた可能性があること、血栓回収療法の方法は均一化されていないことが挙げられる。

【ひとこと】

 血栓回収療法の普及により血栓の組織学的検討が行われるようになったが、病型診断などに役立つ結果にはまだ乏しい。今後もさらなる検討が必要。