脳神経外科てきとうjournal club

読み癖をつけるために

March 9 2019 “吸引カテーテルとステントリトリーバーによる血栓回収療法の比較”

“Aspiration thrombectomy versus stent retriever thrombectomy as first-line approach for large vessel occlusion (COMPASS): a multicentre, randomized, open label, blinded outcome, non-inferiority trial”

Turk AS, et al.

Lancet 2019; 393: 998-1008

 

【背景】

 急性期血栓回収療法のエビデンスを支えている多くの論文はステントリトリーバーを用いたものであり、ガイドラインもステントリトリーバーの使用を推奨している。A direct aspiration first pass technique (ADAPT)は大径のカテーテル血栓に直接押し当て、血栓を吸引、もしくは血栓を吸着させてカテーテルごと抜去する技術であり、ASTER trialでそのステントリトリバーに対する非劣勢が示された。

 本報告では両者のランダム化比較試験を行い、その機能予後だけでなく技術面、臨床面、経済面でも評価した。

【方法】

 前向き他施設共同研究。両テクニックが実施可能な15施設がエントリー。ランダムに吸引群とステント群に割付。プライマリエンドポイントはmRS 0-2の転帰良好とした。

【結果】

 両群のベースラインはどの項目でも有意差なし。ステントリトリーバー群の87%でdistal access catheter (DAC)を使用していた。mRS 0-2は吸引群で52%、ステント群で50%と吸引群の非劣勢が示された。治療開始から45分以内にTICI3を達成した率は吸引群で34%、ステント群で23%と吸引群に有利であったが(p=0.05)、その他の機能予後や生命予後については有意差を認めなかった。合併症率も有意差はなかった。コスト面では表示価格で吸引群が平均$10,084、ステント群は平均$15,158と有意に吸引群が低コストであった(p<0.0001)。

【考察とまとめ】

 発症6時間以内の治療適応例においてADAPTの非劣勢を示し、優位性は示すことはできなかったものの、ASTER trialの結果を後押しするものであった。コスト面では明らかにADAPTが優勢であり、これはステントリトリーバーそのものの価格の問題や、DACの使用率が高いことが挙げられる。ADAPTは安価に同様の転帰が得られる可能性が示唆された。

【ひとこと】

 償還価格はPenumbraが44万円、Solitaire FRが54万円と調べた範囲では書いてあるが、どこで$5,000(約60万円)の差がついたのか不明。MAXシリーズやACE60, ACE68など大径かつ誘導性の高いカテーテルの開発により吸引カテーテルの活躍が目立ってきたが、ステントリトリーバーも同様に進化してきている。結局施設によって特性が分かれてしまうのが現状だろう。