脳神経外科てきとうjournal club

読み癖をつけるために

September 21 2018 “聴神経腫瘍の術中持続顔面神経モニタリング”

“The Method for Placement of an Intraoperative Continuous Facial Nerve Stimulating Electrode in Acoustic Neuroma Surgery: Technical Note”

Torihsashi K, et al.

Neurol Med Chir (Tokyo) 58, 477-480, 2018

 

【背景】

 顔面神経(XII)の機能温存は聴神経腫瘍の手術において最も重要な目的の一つである。筆者らは持続刺激装置をREZに設置することにより術中の持続的な顔面神経モニタリングを行っており、その有効性も報告している。しかしながら刺激装置の設置に難儀することもあり、retrosigmoid approachでの設置の仕方を述べる。

【手術テクニック】

 前頭筋、眼輪筋、口輪筋を対象として自発筋電図と持続だけでなく適宜使用する刺激装置を用いた筋電図を記録できるようにする。持続刺激装置はREZを1Hzで刺激し続ける。

 皮切は逆C型、T-S junctionをkey holeとする4 burr holeで開頭。下端はposterior condylar emissary veinまで、腫瘍が大きければ時にforamen magnumを解放する。Sigmoid sinus側に翻転できるようにU字に硬膜を切開。SS側の硬膜は糸をかけて牽引。

 Cerebellomedullary cisternを解放して髄液を流出させて小脳をslackに。副神経(XI)に沿ってcerebellomedullary cisternからlateral cerebellomedullary cisternまでくも膜を切開。Lateral cerebellomedullary cistern周囲のくも膜を剥離するとREZを確認できる。舌咽神経(IX)を辿って脳幹を確認すればその横にREZが見える。

 時に巨大な腫瘍がREZを覆っているときは、先に腫瘍をdebulkする必要がある。まずは顔面神経(XII)があまり走行することのない腫瘍背側を刺激し、安全であればそこから腫瘍をdebulkしていく。REZが確認できればサージセルとベンシーツで持続刺激装置が当たるように固定する。

【考察とまとめ】

 持続モニタリングはリアルタイムに顔面神経への損傷を避けながら操作を行うことができる点で非常に優れている。持続モニタリングの欠点としては術中に反応が低下した際、ほとんどの場合が刺激装置のずれが原因であるということである。術野の邪魔にならないよう、外尾側にそのコードを設置するのが肝である。

【ひとこと】

 ATで有名な東京医科大学からの論文。実際には術中持続モニタリングを行うこと自体が結構ハードルが高いよう。Schwannomaの85%はCP angleに存在し、内耳道の中は顔面神経、中間神経、蝸牛神経、上前庭神経、下前庭神経に分かれるが、CP angle schwannomaの98%が前庭神経由来である。顔面神経は頭腹側を走行しており、背側は上前庭神経、下前庭神経が走行する。蝸牛神経は尾腹側にある。まずは背側をdebulkするのは顔面神経が腹側に圧排されている可能性が高いからである。