脳神経外科てきとうjournal club

読み癖をつけるために

August 18 2017 “転移性脳腫瘍術後の定位的放射線治療VS全脳照射”

“Postoperative stereotactic radiosurgery compared with whole brain radiotherapy for resected metastatic brain disease (NCCTGN107C/CEC-3): a multicentre, randomised, controlled, phase 3 trial”

Brown PD, et al.

Lancet Oncol. 2017 August; 18(8): 1049-1060

 

【背景】

 転移性脳腫瘍の摘出術後の再発予防として、放射線全脳照射(whole brain radiotherapy; WBRT)が標準治療である。しかしながら、その頭蓋内のコントロールは良好とはいえ、生存率の向上は示されておらず、認知機能の増悪によるADL低下が問題となる症例も多い。全脳照射による認知機能低下を避ける目的で定位的放射線療法(stereotactic radiosurgery; SRS)も現実には行われているが、その有効性はエビデンスには乏しい。SRSとWBRTの術後照射の比較を行った。

【方法】

 アメリカとカナダの48施設で実施。5cm以下のひとつの転移性脳腫瘍病変を摘出した方。3cm未満の3つまでの残存病変は許容とした。SRSとWBRTの2群にランダムに割付。SRS群の放射線照射量は術後摘出腔に応じて設定した。プライマリエンドポイントはoverall survival(OS)とcognitive-deterioration-free survivalとした。

【結論】

 194例が対象(SRS: 98例、WBRT: 96例)。患者背景は有意差なし。頭蓋内の再発までの期間はSRSが短いものの(p<0.0001)、OSの中央値では両者に有意差はなかった(SRS : WBRT = 12.2 months : 11.6 months, p=0.70)。cognitive-deterioration-free survivalに関しては優位にSRS群が長かった(SRS : WBRT = 3.7 months : 3.0 months, p<0.0001)。54例(28%)が1年以上生存し、その中でもSRS群において認知機能低下は少なかった。

【考察とまとめ】

 多施設ランダム化比較試験でSRSの有効性が示された。WBRTの生存率延長への有効性が立証されていないならば、認知機能も含めたQOLを治療の選択の際に考慮するべきである。本報告ではSRS群の術後局所コントロールが過去の報告より悪いが、SRSの照射量を多く設定したことによるpseudoprogressionの可能性はある。SRSはWBRTに比較して認知機能の予後が良好であった。局所の再発コントロールがやや悪いとはいえ、生存率やQOLは有意な低下はなかった。今後はSRSが転移性脳腫瘍に対する術後放射線療法のひとつの有効な選択肢となりうることが示唆された。

【ひとこと】

 全脳照射の認知機能低下は常々問題となっており、定位放射線治療の有効性は期待が持てる。ガンマナイフやサイバーナイフなどを用いているが、今後さらに発展していく分野かもしれない。