脳神経外科てきとうjournal club

読み癖をつけるために

March 17, 2009 “Arteriovenous Fistula Arising From the Persistent Primitive Olfactory Artery With Dual Supply From the Bilateral Anterior Ethmoidal Arteries -Case Report-”

“Arteriovenous Fistula Arising From the Persistent Primitive Olfactory Artery With Dual Supply From the Bilateral Anterior Ethmoidal Arteries -Case Report-”

Tsutsumi S, et al.

Neurol Med Chir (Tokyo) 49, 407-409, 2009

 

【背景】

 Anterior cranial fossa (ACF)のAVFは稀だが出血率が高く、主にethmoidal artery、稀にACAの枝をfeederとする。開頭術が治療の主流であったが、近年血管内治療や放射線治療も選択肢となっている。PPOAは稀な遺残原始動脈の一つであり、同部位の動脈瘤によるSAHの報告はあるがAVFとの関連は知られていない。

【症例報告】

 症例は59歳男性、全般けいれん発作で搬送された。来院時は身体所見に異常を認めなかったが、頭部CTで左の直回に脳内血腫を認めた。造影CTで右ACAからfeederをもち、皮質静脈を介してSSSに流入する病変をACFに認めた。DSAではPPOAをfeederとするACF AVFを認めた。ACA経由で33%NBCAで塞栓術を施行すると、両側anterior ethmoidal arteryもfeederとなってfistulaに流入している事がわかった。左OphA経由で同様に33%NBCAで塞栓術を施行、右OphAにもマイクロカテーテルを導入したがスタンプ圧が低下したため術後視力障害の危険性を考慮して塞栓は行わずに終了した。フォローのDSAではAVFは完全消失していた。

【考察】

 過去の報告ではpial arterial supplyをもつACFのAVFは2例しかない。1例はACAの枝からのfistulaで、SAH発症、もう1例は両側anterior ethmoidal arteryとfrontopolar arteryの枝がfeederとなって皮質下出血で発症していた。本例はPPOAからfeederを認めていたが、PPOAのfeederを塞栓するまでanterior ethmoidal arteryのfeederがわからなかった点が特徴的である。

  AVFの自然暦はまだ解明されていない部分もあるが、出血暦があれば年間7.4%、なければ年間1.5%の出血率と言われている。しかし興味深いことに4%のdAVFは自然閉塞したとの報告もあり、本例でも右ethmoidal arteryのfeederは経過中に自然閉塞した。

 本例では当初はPPOAのみをfeederとするAVFと考えたこと、血腫による圧迫症状がないことから血管内治療の方針とした。右ethmoidal arteryのfeederは開頭術で離断できるとも考えられたが、経過中に自然閉塞した。ACFのAVFはPPOAのような異常な血管パターンを伴うこともあるので注意したい。

【ひとこと】

 Shunt pointはPPOA側にあったのか、それともethmoidal artery側にあったのか。塞栓術後にfeederが顕在化したということは両方から別々のshunt pointに流入していたのか。NBCAをshunted pouchからdrainerまで進めていれば(詳細についての記載はない)ACA側からの塞栓で根治していたのか。NBCAがOphA側に逆流してしまう事があれば失明リスクも考えられるため慎重な治療が必要に思われる。