脳神経外科てきとうjournal club

読み癖をつけるために

May 22 2019 “脳内出血後における抗血小板薬の影響; RESTART試験”  

“Effects of antiplatelet therapy after stroke due to intracerebral heamorrhage (RESTART): a randomized, open-label trial”

RESTART collaboration

Lancet, published online

 

【背景】

 脳内出血患者はしばしば心筋梗塞脳梗塞などの血管閉塞性疾患を背景に持ち、高所得国家においては脳出血患者の1/3が出血時に経口抗血栓薬を内服していた。抗血栓薬は再出血予防のために中止され、多くの場合再開されることはないが、血管閉塞性疾患の予防としては再開することが望ましいと思われる。

【方法】

 イギリス122施設で行われた多施設前向きランダム化比較試験。脳内出血を発症して24時間生存し、かつ発症時に血管閉塞性疾患の再発予防目的に抗血小板薬を内服していた患者が対象。24時間以内に2群に割り付け、一方は割り付けから24時間以内に抗血小板薬の内服を再開した。

【結論】

 2013年5月22日から2018年5月31日の間に562例が対象となり、268例が抗血小板薬再開群、269例が抗血小板薬中止群に割り付けられた。

 再開群の12例(4%)、中止群の23例(9%)が脳内出血の再発を来した。脳出血再発例の30日後死亡率は抗血小板薬の再開の有無で有意差はなかった(再開:中止=5/12[42%]:9/23[39%])。その他の大出血イベントについては再開群で18例(7%)、中止群で25例(9%)、血管閉塞性疾患の発症は再開群で39例(15%)、中止群で38例(14%)であり、いずれも有意差はなかった。

【考察とまとめ】

 抗血小板薬の再開は症候性頭蓋内出血の再発を減らす可能性があるという結果になった。脳出血後の抗血小板薬の再開は、転帰良好が予想される症例においては安全かつ有効である可能性が示唆された。しかし、その結果は予期せぬものであり、その機序としては動脈閉塞が出血の原因となりうること、出血性梗塞が想像より多く混在していた可能性があること、脳内出血に炎症反応が寄与している可能性があること(脳動脈瘤のように)、などが挙げられるが、この解明にはさらなる研究が必要だろう。

 抗血小板薬は多くが単剤であり、2剤以上使用している症例は入ってはいるものの、その安全性については現状では保証はできないと考えられた。

 Limitationは元々エントリーした症例の25%程度が様々な理由で除外されていることが挙げられた。

 RESTART試験は脳内出血後の抗血小板薬再開について検討した初めてのランダム化比較試験である。血管閉塞性疾患の二次予防目的に投与される抗血小板薬の有益性を考えると、再開することによる脳出血の再発リスクの増加は些細なことと考えられる。他の試験の結果も待たれる。

【ひとこと】

 脳内出血再発率が減るという結果は納得しづらいが、少なくとも急性期に抗血小板薬を再開することに関しては有益なのであろう。出血性梗塞であった可能性があると述べられているが、明らかな高血圧性の出血であっても再開してもよいのかどうか疑問に思う。