脳神経外科てきとうjournal club

読み癖をつけるために

July 21 2017 “頭頂後頭葉の深部正中血管奇形に対する対側アプローチ”  

 

“Contralateral posterior interhemispheric approach to deep medial parietooccipital vascular malformations: surgical technique and results”

J K Burkhardt, et al.

J Neurosurg 129: 198-204, 2018

 

【背景】

 頭頂後頭葉の深部正中にある血管病変は通常同側のinterhemispheric approachで切除を行うが、脳動静脈奇形(AVM)などでは外側にmain feederがあり困難な手術になることがある。体側から病変にアプローチすることにより、大脳鎌を切開してinterhemispheric fissureから同様の視野を得ながら、重力による病変の牽引を受けて病変の外側にアプローチすることが可能となる。

【方法】

 1998年から2016年に手術した後方正中に存在するAVMもしくは海綿状血管奇形(CCM)の症例8例を対象とした。

 患側が上になるように側臥位で手術を行った。スパイナルドレナージもしくは脳室ドレナージを置き、髄液を抜ける状態とした。正中を跨ぐ半円形の皮切をおき下方に翻転、SSSを挟んで健側側に大きく開頭した。硬膜は半円状に切開してSSS側に翻転、くも膜を切離してinterhemispheric fissureを開放した。Quadrigeminal cistern(四丘体槽)やambient cistern(迂回槽)を開放するとさらに脳をslackにすることができる。大脳鎌のSSSとISSの間に窓を開ける形で切開し、対側のくも膜を切離してinterhemispheric fissureを露出させた。病変と大脳鎌を剥離することができれば、病変は重力で周辺の脳組織から牽引されるため、そこを剥離して病変を摘出する。

【結論】

 8例中3例がAVM、5例がCCMであった。年齢の中央値は56歳(16-68歳)。全例が大きな合併症なく、CCM1例を除いて病変の全摘出が可能であった。残存病変を認めた症例についても同アプローチで再手術を行い、全摘出することができた。

【考察とまとめ】

 Interhemispheric fissureを介した対側アプローチは重力を上手く利用して正常脳の圧迫や切除を行わずに手術することができる。両側の脳を見ることになるため両側脳損傷のリスクがあること、大脳鎌を切開しなければならないこと、術中出血への対応が難しくなりうることから、あまり広く利用されていないと考えられる。前方の病変の場合は大脳鎌が後方より小さく、大脳鎌を経由して病変にアプローチできない可能性を考慮する必要がある。重力による牽引は同側アプローチでも非常に有用であるが、大脳鎌に窓を開けることによって切除する病変のみを牽引することが可能であり、体位によって頭部の角度を調整して対側から脳の牽引を最小限にしてアプローチすることができる。

【ひとこと】

 同アプローチで前頭頭頂葉の転移性脳腫瘍に対して切除術を検討中。