脳神経外科てきとうjournal club

読み癖をつけるために

September 9, 2016 “Repeated Mechanical Thrombectomy in Recurrent Large Vessel Occlusion Acute Ischemic Stroke”

“Repeated Mechanical Thrombectomy in Recurrent Large Vessel Occlusion Acute Ischemic Stroke”

Bouslama M, et al.

Interv Neurol. 2017 Mar; 6(1-2): 1-7.

 

【背景】

血管内治療は主幹動脈閉塞脳梗塞に対する有効な治療として認められてきた。25%が5年以内に脳梗塞再発をきたすと言われているが、主観動脈閉塞をきたす確率についてはわかっていない。血栓溶解療法の再施行は安全な治療とされているが、血栓回収療法の再施行については報告が限られている。

【方法】

2012年6月から2016年3月までの症例を後方視的に検討。画像や方法に関しては1回目の手技と最後の手技を比較した。有効な再開通はmTICI 2b-3とし、出血性合併症はECASS criteriaに則って評価。良好な転帰は90日後のmRS 0-2と定義。CT-ASPECTSをベースの梗塞範囲の評価に用いた。

【結果】

697人中15人(2%)が2回以上血栓回収療法を施行された。1回目の血栓回収時の平均年齢は62.7歳、2治療間の期間の平均は18日だった。Onset to Punctureは1回目で平均245分、2回目で486分。NIHSSは1回目で平均15.9、2回目で21.2。ASPECTSは1回目で平均8、2回目で8.36。入院中の患者は外来患者より素早く治療される傾向にあった。15人中14人が有効な再開通を得ており、血管合併症はなかった。出血性合併症は1回目では認めなかったが、2回目では2例で認めた。60%(9例)が90日後の良好な転機を辿り、90日後の死亡は3例(20%)のみだった。1回目と2回目の病型は同じであり、心原性が66%、頭蓋内アテローム性が13%、頭蓋外アテローム性が6%だった。2回以上血栓回収を施行した群は1回のみの群と比較して高血圧と抗凝固療法を行なっている割合が高かったが、それ以外は有意差を認める項目はなかった。

【考察】

 繰り返す血栓回収療法のcase seriesでは過去最大のものであり、それは症例によっては安全であると示された。脳梗塞患者の1/4が5年以内に再発すること、主幹動脈閉塞が脳梗塞全体の50%程度に及ぶことを考えると、適応のある症例はまだ潜んでいると考えられる。かつてt-PAの繰り返しの使用の安全性は報告があるが、出血リスクを考えると急性期再発への適応は難しい。またt-PA再投与による深刻な免疫反応の報告もある。病型は心原性が多数を占め、心原性塞栓症はかねてより再発しやすいと言われている。繰り返す血栓回収療法に関しては過去にcase reportがあるが、それらも考慮しても適応のある患者に関しては高い再開通率と良好な転機が担保できると考えられた。

【ひとこと】

 血栓回収療法という主幹動脈閉塞に対する画期的な治療の適応はどんどん広がっている。特に超急性期再発(24時間以内)に関してはt-PA使用例では抗血栓療法も開始できず立ち往生してしまう症例に稀に出くわす。再発例はあまり良好な転機を辿らない印象はあるが、適応と安全な手技を心がければ血栓回収療法に向かえるというのは、再発例に対する大きな武器となる。