脳神経外科てきとうjournal club

読み癖をつけるために

November 27, 2013 “Development of the PHASES score for prediction of risks of rupture of intracranial aneurysms: a pooled analysis of six prospective cohort studies”

“Development of the PHASES score for prediction of risks of rupture of intracranial aneurysms: a pooled analysis of six prospective cohort studies”

Grevin JP, et al.

Lancet NEurol 2014; 13: 59-66

 

【背景】

 頭蓋内未破裂動脈瘤の予防的治療の適応に関しては、その破裂の予測が困難であることと治療合併症のリスク(約5%)から一定の見解は得られていない。現状では動脈瘤の大きさ、位置、多発動脈瘤、女性、若年、くも膜下出血の既往、喫煙がリスクと言われている。破裂リスクを評価する指標を作成するために6つの前向きコホート研究を用いて検討した。

【方法】

 過去の前向き研究のうち6つを使用(ISUIA、SUAVe、UCAS、Juvelaらのフィンランドの報告、Ishibashiらの日本の報告、Wermerらのオランダの報告)してリスク因子に関して多変量解析を行った。SUAVeとUCASで重複する57例は片方のみ残して除外した。

【結果】

 8382例、10272個の動脈瘤について検討。230例で破裂を来した。1年破裂率は1.4%、5年破裂率は3.4%であった。多変量解析では年齢、高血圧、くも膜下出血の既往、動脈瘤の大きさ、位置、国籍が独立したリスク因子となった。性別、喫煙歴、多発動脈瘤は有意なリスク因子とならなかった。そこから破裂予想のスコアリングを作成した。

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【考察】

 PHASESは初の動脈瘤破裂を個別の患者について簡単に評価する事ができる初のスコアである。年齢、高血圧、くも膜下出血の既往、動脈瘤の大きさ、位置、国籍がリスク因子となり、従来言われていた性別、喫煙歴、多発動脈瘤はリスクとならなかった。また、くも膜下出血の家族歴や動脈瘤の増大などリスクと言われている項目については今回のコホートでは評価ができなかった。

 Limitationとしては多発脳動脈瘤患者については最大径のものしか評価していないこと、報告によって足りない項目があること、外のコホートの確認を行っていないこと、動脈瘤評価のmodalityが報告によって異なること、入力に間違いがある可能性があること、治療されている動脈瘤についてはselection biasがかかっている可能性があることが挙げられる。しかし、純粋な脳動脈瘤の自然歴というのは確認することは不可能である。

【ひとこと】

 大きいコホートでの多変量解析を用いたリスクスコアPHASESの論文。年間破裂率ではなく5年破裂率で評価されているが、7mm以下は0点と小さめの動脈瘤を治療するには厳しいスコアリングとなる。