脳神経外科てきとうjournal club

読み癖をつけるために

July 7, 2017 "Delayed treatment of ruptured brain AVMs: is it ok to wait?"

“Delayed treatment of ruptured brain AVMs: is it ok to wait?"

J. S. Beecher, et al.

J Neurosurg 128: 999-1005, 2018

 

【背景】

出血例であってもAVMの根治術は必要ない場合が多く、根治術のタイミングについては確立された時期はない。新規出血のAVM症例に対して待機的治療を行うことの安全性を評価した。また、出血後の破裂AVM症例での再出血や神経所見の増悪について調査した。

【方法】

 2000年1月から2015年12月までに著者施設を受診した破裂AVM症例のうち出血後最低4週間は治療を行わなかった症例を対象とした。緊急でAVM摘出術を要した症例、初期治療を他施設で行われた症例、他の理由で4週間以内に治療を行った症例は除外した。最初の出血から治療計画失敗(再出血またはAVMによる神経学的所見の増悪)をprimary outcomeとした。初回出血の日から治療を行った日、もしくは治療計画失敗の日までを計算してpatient-daysと定義した。

【結果】

 102例の破裂AVM症例が対象となり、治療法は7例(6.9%)で失敗した。6例(5.8%)は中央値248日(33-1364)で再出血を来した。危険に曝されているPatient-daysの合計はのべ18,740日であり、年間11.5%、月間0.96%の再出血率となった。12例(11.8%)に関連する動脈瘤を認め、のべ263日で動脈瘤は治療された。そのうち1例(8.3%)に再出血を認めた。動脈瘤症例の月間再出血率は11.4%となった。

【結論】

 AVMに対する選択的治療を計画してAVM破裂後の早期リハビリ介入を目指す研究である。著者の治療計画を定量化する意味でこのデータは有用である。本研究からは初回出血から4週間以降の介入でも再出血リスクは低い(<1%)ことが示唆される。関連する動脈瘤のような高リスクとなる所見を認めた場合は治療計画を修正する必要がある。

 

【ひとこと】

 著者らは急性期(4週間以内)に根治術を施行しない事による手術の安全性(血腫が吸収される事で手術プランを立てやすく術野の確保しやすい)と障害に対する早期のリハビリ介入が可能となるとしている。もちろん破裂リスクは0ではないので4週間後を目安に手術可能例については根治術を検討するよう推奨している。著者らのプロトコールではGradeが低く、症状が軽いものに関しては急性期・亜急性期での根治術を施行している様である。

 動脈瘤合併例では再破裂リスクが高いと考えられているが、本研究では症例数が少なく、今後も症例の蓄積が必要と思われる。