脳神経外科てきとうjournal club

読み癖をつけるために

August 2 2018 “脳内出血に対する低侵襲手術:メタ解析”

“Minimally invasive surgery for intracerebral hemorrhage: an updated meta-analysis of randomized controlled trials”

Scaggiante J, et al.

Stroke 2018; 49: 2612-2620.

 

【はじめに】

 脳内出血は世界で年間200万人が罹患し、発症1年で50%が死亡する最も致死率の高い脳卒中である。生存者のうち61-88%が半年間でADLの自立を獲得することができる。数々のRCTが手術加療について行われて来たが、予後の改善を示したものはなかった。近年は低侵襲手術(minimally invasive surgery: MIS)のRCTが多く行われており、様々なMISの手法を含めてメタ解析を行った。

【方法】

 MISとその他の治療群とを比較したRCTを用いてメタ解析を行った。

【結果】

 958の報告から15の質の高いRCTを抜粋してメタ解析を実施した。MIS群では8報告が定位的血腫溶解療法を、1報告が定位的血腫吸引術を、5報告が内視鏡下手術を、1報告が定位的血腫溶解療法と内視鏡下手術の両者を用いていた。その比較対象としては9報告が内科的治療を、6報告が開頭術を用いていた。

 MISは内科的治療や開頭術と比較して明らかな死亡率の低下と機能予後の改善を認めた(p<0.00001)。開頭術と直接比較してもMISの方が利点が多いとわかった(p=0.0002)。定位的血腫溶解療法と内視鏡下手術の両者についてそれぞれ評価しても、どちらも有意にMISが優れた結果であった(p<0.00001)。発症から24時間以内、また72時間以内に手術を行った群にわけてサブ解析を行っても、MISが有意に優れた結果であった。

【考察とまとめ】

 ICHの治療としてMISが非常に優れていることがわかった。また、手術の介入までに時間についても、発症から24時間以内の超急性期でも72時間以内の急性期でも、MISが優れていた。定位的血腫溶解療法と内視鏡下手術を比較した報告はなく、今までの報告からもこの二者は比較することはできない。しかしながらその他の治療(内科的治療もしくは開頭術)と比較して明らかな死亡率や機能予後の改善を示す結果となった。今後はそれぞれのMISの手技についても検討がされていくであろう。

【ひとこと】

 開頭術と比較しても有意差を持って優れているとなると、脳内出血に対する開頭術は絶滅していくこととなるだろう。内視鏡下手術は未だ普及には至ってないと考えられ、定位的手術がひとまず1st choiceとなるか。実際には出血点が確認できるわけではなく、個人的には術後の不安が多い手術の一つだが。