脳神経外科てきとうjournal club

読み癖をつけるために

March 9, 2018 “Accuracy of detecting enlargement of aneurysms using different MRI modalities and measurement protocols”

“Accuracy of detecting enlargement of aneurysms using different MRI modalities and measurement protocols”

Nakagawa D, et al.

J Neurosurg 130: 559-565, 2019

 

【背景】

 脳動脈瘤の増大は破裂予測因子として重要だが、臨床的に判断するのは容易でない。脳動脈瘤の画像検査は様々な方法があり、MRAは非侵襲的かつ有用な検査であるとされているが、動脈瘤が増大傾向であるかどうかの判断においての信頼性は評価されたことはない。MRAの様々なmodalitiesで評価した。

【方法】

 8つの動脈瘤を持つシリコンモデルを3Dプリンターで3体作成、3体で動脈瘤は徐々に増大する設定にした。MRIは1.5Tと3.0Tを使用、TOFとGd造影を実施した。3名の神経放射線医が診断、画像は並べて見比べることはできず、それぞれの画像ごとにサイズを計測させた。動脈瘤のサイズは最大内径、最大横径、そして残った径と3回測定した。同一動脈瘤に対して最低でも1つの測定で0.1mm以上の増大(縮小)を検出し、かつその他の測定で縮小(増大)したと評価しなければ、「動脈瘤増大(縮小)を検出した」と定義した。

【結果】

 観察者間の動脈瘤増大の検出率に有意差はなかった。また、最低でも1つの測定の動脈瘤増大を検出する確率は平均して95.7%であり、3.0T Gdは1.5T TOFより検出率は高いもののこれも有意差はなかった。「増大を検出した」のは平均して54.8%であった。観察者Cは有意に検出率が高い結果となった(A: 49.0%, B: 46.1%, C: 66.7%)が、modality間の差はなかった。

 動脈瘤の縮小について評価させると、最低でも1つの測定で縮小したと評価したのは平均して43.8%の検出率であり、観察者Cの検出率が有意に低かった(A: 50.0%, B: 51.7%, C: 30.2%)。Modality間の差はなかった。

 「縮小を検出した」のは平均して3.9%。観察者間やmodality間で有意差はなかった。

 動脈瘤の偽増大(1つの測定で増大したと評価するも、その他の測定で縮小したと評価したもの)は40.6%の検出率であった。観察者Cは有意に検出率が低かった(A: 49.0%, B: 48.3%, C: 26.0%)。1.5T TOFは3.0T Gdに比して検出率が低くなった。

 全体を通してはmodalityごとの動脈瘤増大の検出率は3.0T Gdに高い傾向にはあったものの、1.5T TOFとも有意差がつくことはなかった。1.5T TOFと1.5T Gdで比較すると0.4-1.0mmのわずかな増大を検出するという点に関してはGd造影の方が優れている結果となった(p=0.04)。3.0T TOFと3.0T Gdでは差はなかった。

 動脈瘤の部位に関しては、Lt. IC-Ophthalmicは検出率が低く、Lt. IC-top、Rt. IC-cavernousは検出率が高かった。

【考察】

 3人の観察者においてMRI動脈瘤増大はよく検出されており、意見の相違は少なかった。動脈瘤径はサイズが変わっていないにも関わらず計測を誤って増大(縮小)と判断してしまうこともあった。動脈瘤の部位ごとに検出率に差が出ることはあった。MRIのmodalityで動脈瘤増大の検出に有意差はなかったが、3.0T Gdは1.5T TOFより検出率が良い傾向にはあった。

 結果からは最低でも0.7-0.8mm程度の増大がなければ信頼できる検出率を担保することはできないと考えられた。1.5Tより3.0T、TOFよりGd造影の方が検出率は良い傾向にあるものの、TOFに関しては3Dモデルの中に水を通して撮影しているため、血液ならば結果が異なっていた可能性は否定できなかった。

 動脈瘤の部位は検出率に高い影響を持っていたが、解剖学的に親動脈と分離して観察しやすいか否かが影響していると思われた。

 2015年のAHA/ASA未破裂脳動脈瘤ガイドラインでは動脈瘤の増大を認めた場合は治療が強く推奨されている。増大を検出するということは治療方針を決定するにおいて非常に重要な因子である。

【結論】

 0.4mmから2mmまでの増大に関してMRIは有効な手段と考えられた。Gdの使用は検出率を改善するであろう。動脈瘤の部位も検出率に影響することがわかった。さらなる精度の高い検出率を求めるにはさらなる検証が必要だ。

【ひとこと】

 有意差を考えると1.5T TOFでも十分に検出できるということだろうか。3.0TやGd造影の方が細い動脈の評価はできる印象があるが、動脈瘤のサイズに限って言えば1.5T TOFでも十分な精査が可能ということか。もちろん3.0Tがあればそちらが優れているし、侵襲を厭わないのであればGd造影を行うのが良いのだろう。増大を検出するかどうかというのはフォローアップ段階の話なので、非侵襲的なTOFが現実的と思われる。